結論から先に言うと、デポジット=割り込み代金ではない。
言いたいことはTwitterで大体言ったと思うので、ざっくりまとめた。
手元に資料がないので、はる君が退院後に補記したい。
たぶん間違いがあると思うので、遠慮なく指摘してほしい。
デポジットとは何か?
デポジット(=deposit)を英和辞書で引くと「手付金」「保証金」などと出てくる。
海外で心臓移植を受けるとなると、今はアメリカ(またはカナダ)に行くことになる。
アメリカの場合、海外の子供にも心臓移植の枠があらかじめ数パーセント用意されている。
病院で治療を開始する前に現物で支払う必要がある代金がデポジットだ。
高額すぎないか?
ご存知の通り、日本には国民皆保険制度があるが、アメリカにはない。
心臓移植は最も高度な医療行為のひとつなので莫大な費用がかかるが、いざ受け入れた後に支払えない、というのは困る。
そこで、あらかじめ一定の額を手付金として支払う必要がある。
(デポジット以外にも、実際に渡米する際には飛行機はチャーターしなくてはいけないし、移動の際に同伴する医師や看護師などの人件費も必要)
でも、順番飛ばしになるんでしょ?
心臓移植待機者には優先度が設定されていて、ドナーが現れた時にはおおむね優先度順に移植が決まる。
費用を多く払えば早く移植を受けられる、というわけではない。
人に頼るなど甘い、持ち家を売れ、車を売れ(ry
くだらない。
移植待機者の親はすでに様々なものを支払っている。
息子は移植待機者ではないが、病状の悪化により保育園に預けられず、わたしは職を失った。
障害のある子を養育する家庭の貧困率は高い(ちなみに離婚率も高い)。
生まれつきの病気がある子どもを産み育て、貧困に陥ってしまうことは、はたして自己責任だろうか?
国内の心臓移植の問題
海外移植が批判されるのもわかる。
渡航先の国の子が犠牲になっているからだ。
2008年に採択されたイスタンブール宣言により、渡航して移植を待つことは国際的な批判の的にもなりかねないだろう。
しかし、国内で心臓移植を待つ患者の列はとてつもない長さになっている。
2018年12月末の時点で736人*1。
子どもは大人よりも体が小さく、余力がない。
アメリカなら、日本では移植せずとも手術をするような比較的軽い症例でも移植が受けられる事もある。
小児の心臓移植が進まないのは何故か、所属している患者会の会報に載っていたのは
「移植ができる施設ではない」
「移植できる施設であっても、移植するかどうか聞かれない」
「虐待の可能性を否定するのが難しい場合がある」
などだった。
親御さんの判断になるからというのも大きいだろう。
心臓移植できるほどの健康な体を持っていたわが子が、脳死となって数日後には心臓も止まる、と突然言われる。
想像するだけでも辛い。
そこで心臓を提供するという重い決断が、果たしてできるだろうか。
あなたに出来ること
現状、国内の臓器移植のドナー不足は深刻だ心臓に限らず)。
あなたにもすぐに出来ることがある。
臓器提供の意思を決めることだ。
免許証か保険証の裏には臓器提供意思欄がある。
そこに「提供する」または「提供しない」どちらか決めて書き込むだけでいい。
できれば家族にその事を伝えて、家族の署名をもらっておくと尚良い。
インターネットで登録もできる。
デポジットを「順番飛ばし代金」「割り込み代金」なんて揶揄をする者は、自らには到底手にすることができない大金を病気の子どもがもらうことに嫉妬している。
義憤なんかじゃない。
感情に任せ、ありもしない言説をでっち上げてしまった。
義憤を感じていたのは自分自身だった。
改めて……デポジットとは保証金のことである。
「順番飛ばし代金」「割り込み代金」であるというのは誤りだ。
そのような誤った言説が横行することは、当事者・関係者を傷付け、移植医療そのものへの忌避感を高めることになりかねない。
ドナー不足を解決するには国内での移植の道を開くほかにない。
そのためには正しい知識が必要だ。まだまだ勉強が足りなかった。
わたしはデポジットを「割り込み代金」とすることに反対だ。