夜明け前の心臓(仮)

最重度の心臓病の一つである左心低形成症候群の息子の記録。手術・入院・通院の事や病気の情報など。あと雑記。

術前入院2日目【麻酔科IC/セカンド・オピニオン】

2017/12/12

 本日は手術に備えた予備日のため、検査予定なし、バイタルチェックのみ。はる君は朝から比較的よくご飯を食べた。元気に目覚めて元気に食べ、たくさん遊んだ。

 まずは昨日の記事で書ききれなかったフォンタン手術のことについて。

フォンタン後のこと

フォンタン循環になったあと予想される合併症

  1. ワーファリン服用による合併症(出血傾向、血が止まりにくい)
  2. 弁逆流
  3. 心室機能の低下
  4. 開窓部の閉鎖、瘻(穴)の悪化

 フォンタン循環が成立するかどうかは血管の圧力と酸素飽和度の微妙なバランスの上に成り立っている。手術後一見安定しているように見えても、乳幼児の手術の場合は麻酔から目が醒めると全力で泣くから、循環のバランスを安定させるのが難しい。


開窓フォンタンの今後

 主治医から説明を受けるまでは、開窓のないフォンタンじゃないと低酸素状態が続くことを悲観していた。ただ、やっぱりいまのはる君の場合は完全なフォンタンに進むことは難しいんだろう、と前向きに諦めることができた。
BJ先生(仮)がおっしゃっていたのは、昨今はフォンタンに進める子が増えてきたという話だった。施設によっては、フォンタン手術を全て開窓型で行うところもあるそうだ。

 今回の開窓部は4mmの予定だ。穴の部分の圧力差があることにより、圧力の高いところ(体から戻ってきた静脈血)から低いところ(心房)に血液が流れる。この圧力差が無くなった場合、穴の周りに血液の中の組織がくっついて自然閉鎖もあり得る。
ただし、自然閉鎖が良いかというとそうとも言い切れない。心室機能が弱まった結果穴が自然閉鎖した場合には血中の酸素飽和度はあがる一方、心不全が進んでいて心臓は苦しがっているという可能性もある。ふ、複雑……。ちょっと分かりづらいと思うので、時間があれば図解で解説したい。

 通常のフォンタン手術でも同様だが、術後は間を開けてカテーテル検査を行い、きちんと循環が成り立っているか定期的に見ていくことになる。検査の際に心臓の穴を閉鎖するデバイスを使って、試しに穴を閉じられるかテストしてみることもあると言う。現在欧米では、開窓フォンタン患者の穴をカテーテルで閉鎖するという治療が始まっていると聞いた。残念ながら現在の日本では保険適用外だそうだ。

麻酔科のインフォームド・コンセント

 手術は全身麻酔で行われるので、外科のインフォームド・コンセント(IC)とは別に設けられていた。内容的には手術の度に聞いていることと大きく変わった点はなかった。

 手術の2時間程前にまず鎮静効果のある薬を飲む。エコーの時よりも強力な薬だ。
実際に手術がはじまる直前に、点滴のラインから麻酔薬を入れると10秒で眠りにつく。仮に起きていたとしても、吸入するタイプの麻酔薬で30秒で同じように眠る。

 全身麻酔をすると、喉の反射が完全に失われる。嘔吐してしまったら、吐瀉物で窒息する危険のほか、胃液が肺に入ってしまうとかなり死亡率の高い合併症を引き起こすことがあるからね。とプレッシャーをかけてくる先生。食事や水分摂取には何時まで、という制限があるのでしっかり守る必要がある。

 かっこよくてどこか狐の妖怪を思わせる雰囲気の玉藻先生(仮名)は「はる君大きくなったね」と目を細めてくれた。玉藻先生は、その昔は左心低形成症候群のお子さんを何人も看取ってきた、と去年言っていた。その他の単心室の子どもに比べ、左心低形成症候群の子どもは重症度が高い子が多いという。この時代、ここ日本に産まれなければ、やっぱりはる君も助かってなかったんだろうな、とぼんやり思う。


セカンド・オピニオンのすすめ

 はる君が手術、治療を受けるこの病院にはセカンドオピニオン外来がある。セカンドオピニオンをざっくり言うと、現在かかっている病院での診断や治療方針について、別の医師からの意見を求めることだ。先天性心疾患と言っても、病名が同じでもひとりひとり全く違うし、医療施設によっても、主治医の考え方ひとつとっても意見が別れることだって珍しくない。だから、治療方法で他の医師ならどう判断するのか、この治療で良いのか、なにか疑問に思ったり、違う意見を聞いてみたくなったときはセカンドオピニオンを受けることをすすめたい。
事実、病棟のお母さん達の中の少なくない人数がこの病院でセカンドオピニオンを受け、転院してこちらで治療を受けている(はる君の場合は高次医療機関からの直接の紹介だった)。

 セカンドオピニオンを受けるには、現在かかっている病院の主治医にまず相談することが必須だ。今までのデータを引き継ぐ必要があるから。主治医からの情報提供を貰わないで別の病院に行くことをセカンドオピニオンとは言わない。いまの主治医になんとなく悪い気がするかもしれないけど、別の意見を求めるのは患者の権利として認められているからね。

 このブログにははる君の病院名は公開していないが(同じ病院に通っている方はすぐわかるだろうけど)、セカンドオピニオンを検討している病児の親御さんに限り、個人的に伝えることはできる。問い合わせのメールまたは、TwitterのDMで連絡してただければ、と思う。


おだやかな日

 はる君は1日中病棟をお散歩し、プレイルームで存分に遊んだ。この病院が好きなところは本当にたくさんあるけど、常時プレイルームが解放されているのがいい。早朝も消灯後も遊べる。酸素ボンベを携帯した心臓病児が安心して思いっきり遊べるのは病院のプレイルームだけだなんてちょっと不憫だけど、根治術が終わって安定したらきっと抵抗力もついてみんなと一緒に遊べるようになるってさ。

 この日は病院に来てくれるボランティアの方がクリスマスカードのキットをくれたので、お友達みんなでカードを作って遊んだ。

 寝る前にはる君に明日の手術の予定を伝えた。はる君の心臓を治すために、一回からだの中を切って血管をつなぎ変えること。最初は痛くて苦しいけど、元気になったら前より体が楽に動くこと。かあちゃんは、少しだけはる君と離れること。でも必ず毎日会いに来ること。小児病棟のお部屋に戻ってしばらくしたら、お家に帰れること。
はる君は、わかったようなわからないような顔をしていた。