夜明け前の心臓(仮)

夜明け前の心臓(仮)

最重度の心臓病の一つである左心低形成症候群の息子の記録。手術・入院・通院の事や病気の情報など。あと雑記。

カテーテル検査の結果

カテーテル検査の結果について主治医から病状説明を受けたので、素人の理解レベルで解説します。
心臓病の症状はひとりひとり違うので、この説明はあくまではる君の場合だということと、正確さの保証はいたしかねることご了承ください。

両方向性グレン手術後

簡単におさらい。
通常、肺で酸素化された血液(動脈血)は心臓(左心房)に戻ってきて、左心室が全身に動脈血を行き渡らせる。酸素を消費した血液(静脈血)は右心房に戻り、右心室が肺に静脈血を送る。

はる君が目指しているフォンタン手術は、動脈血を心臓で全身に送ったあと心臓を経由せずに静脈血が肺に流れる循環にする手術だ(すごい発想)。

肺→心臓(左心)→身体→心臓(右心)→肺……を
肺→心臓→身体→肺……に組み替えるので、右心バイパス手術と呼ばれたりもする。

両方向性グレン手術は、
肺→心臓→上半身→肺……
肺→心臓→下半身→心臓→肺……
という状態になる。
上半身だけフォンタン循環になっている。
(ヘミ-フォンタンと呼ばれることもある)

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両方向性グレン手術後の心臓(心臓内部の構造は省略)


参考リンク:【東京女子医科大学 心臓血管外科】 わかりやすい先天性心疾患の解説

重要な要件

まず、フォンタン循環が成立するかどうかを左右する要素についての説明を受けた。

  • 心臓の動き=OK
  • 房室弁逆流=OK
  • 肺動脈
    • 細い
    • 圧力はOK

心臓の動き

これはそのまま。心筋が元気に動いているかどうか。
病状説明の時には撮影した動画を見せてくれる。
わー、元気に動いてる、とは思うものの通常の心臓の動きがどんなものか比較できないよ……わたし達はただうなずくだけ。

房室弁の逆流

右心房と右心室のあいだの弁、三尖弁の逆流具合を造影剤を流してチェックした。
弁逆流の度合いは、数字が小さいほうが逆流が少ないとして、4段階中の1から2程度と軽度だった。
これは直感的に素人目にも「ああ、そんな漏れてないな」と感じられる程度だった。

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ポインターの示すあたりが三尖弁

グレン-フォンタン循環の人には多かれ少なかれ三尖弁の逆流が発生する。
弁逆流が大きい場合には弁を縫い縮めるなどして形成することもあるようだ。

肺動脈

フォンタン循環は肺にスムーズに血液が流れることが大切だ。
すなわち、肺の血管の圧力が低いことと、肺動脈が太いこと

肺動脈は細いと言われた。
ずっと在宅酸素療法を受けながらがんばってきたけど、そう上手くはいかない(酸素を吸うことで肺の血管が拡がることを期待していた)。

圧力が高くなかったのは幸いだったが、下にある図のようにひしゃげていた。
(ここはスムーズに流れるように、切除して縫い合わせるかもしれないとのことだった)

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肺動脈の形状

酸素飽和度の低下が肺高血圧によるものでなくて良かった(?)。

側副血管・その1

はる君の心臓はグレン手術の結果心臓の負担は減ったけど、動脈血と静脈血が混じり合っている低酸素状態は続いている。

低酸素状態が続くと、肺が血管を新たにつくり出す。
この新しく生まれた血管を側副血管(側副血行路)という。

動画でみせてもらったが、驚くほどしっかりめの血管ができていた。
心臓を大きく横切るこの血管は静脈と静脈をつないでいるため、特に処置は必要ないとのことだった。
ちょっと血が横道(=シャント)にそれるだけ。

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側副血管・その1(静脈-静脈シャント)

各所の酸素飽和度

実は右の肺、つまりこの図で向かって左の肺への血管は蛇行していてカテーテルが通らなかったそうだ(え、ええーっ)。
図の青い血管は身体から戻ってきた静脈血、赤い血管は動脈血を示している。数値は酸素飽和度の値だ。
この図の赤い二本の血管のうち、向かって左側の数値がないのは計測できなかったから。
左右の肺から戻ってきた値は97.3%。直接の計測はできなかったが、重大な何かが起こっているとは考えにくい。

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直接測定した酸素飽和度の数字

酸素を切って寝ている状態(検査中)で70%ほどの酸素飽和度があったそうだ。

肺動静脈瘻の疑い

肺の右下に血液が入り→出ていくタイミングが早い、と言われた。他の部分への血液の流れと比べると、確かに明らかに早い。
つまり、十分に酸素化されずに血液が肺から出て行ってしまっている。これが酸素飽和度が低い原因ではないか、とのことだ。
肺動静脈瘻という。瘻(ろう)とは、穴のこと。

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肺動静脈瘻

グレン循環だと肺動静脈瘻になりやすいそうだ。
肝臓を通った血液に、肺動静脈瘻を防ぐ物質(Hepatic factor/肝因子)が含まれている可能性が示唆されているが、グレン手術の後は下半身からの血流が肺に行かない。
フォンタン手術を行ったあとは、肝臓を通った血液がふたたび直接肺に流れ込む。
それで肺動静脈瘻が改善されるかもしれない、とのことだった。

参考リンク:小児慢性特定疾病情報センター/肺動静脈瘻
 

側副血管・その2

先の側副血管は静脈→静脈だったが、動脈と静脈を繋ぐように発達した新生血管が問題となる。
残念ながら、はる君にはこの問題のある側副血管が複数できてしまっている。

そこで、コイルで血管の一つ一つを詰めるカテーテル治療(コイル塞栓術)が行われることになった。
コイルを詰めて一旦退院し、カテから一週間おいた後にフォンタン手術となる。
ちなみに、二週間以上間があいてしまうと再度側副血管が発達してしまうので、速やかに手術する必要がある。

穴開きフォンタン

さて、いよいよフォンタン手術になるが、はる君の場合は穴開きフォンタン(Fenestration/フェネストレーション、開窓フォンタン)になるようだ。
人工血管が心臓の外を通る(TCPC型)が、心臓と人工血管の間にあえて穴を開ける。

酸素飽和度は下がるが、圧力が高まった時に血液が逃げて鬱血を防ぐ。
肺動脈の太さが十分でないことから、穴開きになるようだ。

身体が成長したら、穴をふさぐ手術が受けられる可能性はある。
ただ、2017年現在、穴開きフォンタンの穴をふさぐ手術は保険適応外だ。
自費ならおそらく数百万円……。


フォンタン手術を受けられる子は、出生数の7割程度と言われた。この事は割と早い段階から説明を受けている。
仮にフォンタン手術が不成立だったとしても、すぐに命に関わるわけではない。
グレン循環で成人している方もいる。医療は日進月歩だ。昨日出来なかったことが、明日できるようになるかもしれない。


フォンタン手術とは、チアノーゼをなくす手術である。
ノーウッド/グレン手術が“姑息術”と言われるのに対し、フォンタン手術は“根治術”と呼ばれる。
でも根治という単語からイメージする『病気が治る』という印象からは少し遠いね。

参考リンク:http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_hamaoka_h.pdf

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ブログのタイトルを「夜明け前の心臓(仮)」としたのは、魚なんかは一心房一心室だから、単心室って人類の夜明けの前の心臓だよねって思ったから。
フォンタン手術が終わって退院したらブログタイトルも変更するつもり。

夜が明けても、日常は続く。がんばろうね。