夜明け前の心臓(仮)

夜明け前の心臓(仮)

最重度の心臓病の一つである左心低形成症候群の息子の記録。手術・入院・通院の事や病気の情報など。あと雑記。

障害児を産んだ母親が、自責の念にかられる事について

幼い頃、わたしが喘息の発作を起こすたびに「元気に産んでやれなくてごめんね」と母がじめじめ謝罪するのが鬱陶しかった。
身体の弱い子を産んだ、としばしば母親は苦悩する。
そういうのは、もう止めようぜ!って話。

罪ではないし、罰でもない

ここは小児病棟だから、付き添いのお母さん達は軽重の差はあれ、全員が“身体の弱い子供”(=障害児)を産んでいる。
どのお母さんも強く見えるけど、何人かのお母さんは「こんな身体に産んでしまった」自分を責めていた。

先天性疾患は原因が特定されていない事が多い。ごく一般的な妊婦生活を送っていても、通常とは違う形の身体に産まれる事がある(当たり前だけど、妊娠が分かってからも毎日飲酒する、とかの極端なケースは除く)。
違う形っていうのが心臓だったら心疾患だし(はる君は左心系が極度の低形成である、左心低形成症候群)、神経系なら発達遅滞だったり発達障害だったり。外見でわかる障害もある。

お母さん、あなたが犯した罪のせいで、あなたの赤ちゃんが病気になって産まれた訳じゃない。
障害のある子供を産んだ事を嘆くのは、あなたに障害者を差別する気持ちがあるからだ。

追い詰められたお母さん

入院中に出会ったお母さんが、ぽつぽつと話してくれた。
「やっぱり、わたしが助産師さんの言う事をきちんと聞いていれば、こんな身体に産まれなかったのかな……妊娠中、頑張ってたつもりなんだけど、沢山怒られちゃって……」
ダンナに、『お前が理想ばっかり高いせいでこんな子供が産まれた』って言われて……」
他人事だけど、めちゃくちゃ腹が立った。
彼女の場合、この助産師とダンナが悪い。

助産師が出てきた訳は、彼女が助産所で出産したからだ。色々思うことはあるけど、今回は助産所で出産する事自体については批判はしない。
アットホームな雰囲気だったり、自然との調和を大切にする等、助産所のターゲットは明確だから住み分けは出来ている。
助産所での出産と言っても、妊娠しているかどうかの確定は医師の診断が必要だし、提携産科で必要な医療は受けられる。

子供の健やかな成長の為には自然なお産がより好ましいと考える人達は、好んで自分の信念において助産所を利用するんじゃないかと思う。
より良いお産を求めて。
それが、自分と子供の為であると強く信じて。

それで、彼女は助産所の指導に従って、スクワットしたり、食生活に気を付けたり、生活面での細々とした約束事を頑張ってきたが、全部は守れなかったとの事。
そして、産まれてきた子供は手術を要する先天性疾患を抱えていた。
出産前に厳しい指導を受けていたせいで、彼女は障害がある子が産まれたのは自分の努力が足りなかったせいだ、と強い自責の念にかられていた。

指導に従っていたら、健康な子供が産まれたんだろうか?

助産所の指導通りに生活をしていれば、健常児が産まれたんだろうか?
それについてはわたしにはなんとも言えない。
ただ、その事をネタにお母さんを脅かすような事を口にするのは正しい事とは思えない。

わたしは医師でも専門家でもないし、取り立てて詳しくもない。
ただ、例えばダウン症候群等遺伝子疾患の場合、大半が受精後の初回の細胞分裂時にそれと確定する。その後に正しい(?)妊娠生活を送っても治る訳ではない、という事なら知識として知っている(先に例を出させてもらったお母さんのお子さんはダウン症候群ではない)。

無責任に生活について口出しをして、彼女に不要な罪悪感を与えるなんて、ただただ酷い。
自然に出産するのが善ならば、出生後障害がわかり、生きていくのに医療の介入が必要な子どもは悪なのか?

大人になった先天性心疾患の方の話を聞いて

妊娠中、精密検査のため入院していた時、心疾患を持って産まれてきたという医療スタッフさんがいた。その方が心疾患があるなんて、言われるまでわからなかった。
その人には「ママ、自分を責めないで」と優しく諭された。

「母親の過剰な罪悪感を、子供は敏感に察する」
「子供は、母親を責めたりしない」
「生まれ持った心臓を他と比べることなんて出来ないから、子供はそれが当たり前だと思って過ごしている」
「手術は確かに痛くて苦しいけど、手術の度に身体が軽くなっていった」
「私は心臓病だったけど、不幸じゃない」
大体、こういった内容の事を言われた。
その方も、事あるごとに「こんな身体に産んでごめんね」と言う母親には少し辟易しているように見えた。

障害児と生きること

だから、お母さん。
そんなに自分を責めないで。


そう、その通りだろう。
だから、自分を責めるのはやめた。不毛だ。
はる君に「(心臓が悪い事に対して)可哀想」とはもう言わない。

過剰に自分を責めてしまうのは、自分に自信が無くて、自分を大切に思ってないからかも知れない。
子供には、卑屈にならず、健全な自尊心を身に付けて欲しい。他人を尊重する事と、自分を大切にする事は両方とても大事。
わたしに健全な自尊心が身に付いているとは残念ながら言えないけどね。